鋼殻のレギオス 10
甘い香りとともに、今年もまたツェルニにその日がやってきた。愛の告白の代わりにお菓子を送るバンアレン・デイ。「ばかばかしい」。その宣伝ポスターの前でフェリは呟き、無表情のままため息をつく。どうせアレは、ツェルニ中に漂うこの甘ったるい空気に気付くこともなく、いつも通りの日をぽややんと過ごしているに違いないのだ。「……ばかばかしい」。フェリはもう一度、呟いた。同じ頃、ニーナはディックと名乗る、不思議な雰囲気を漂わせた青年と出会う。その出会いが、後にもたらす真の意味を知らぬままに――。
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